2023年4月17日(月)週刊ハトさん
もともと三度の飯よりも酒好きで、三時のおやつにカフェに入るくらいなら居酒屋を選んでいた私が、出産を機にめっぽう酒に弱くなってしまった。それに代わる娯楽をみつけたい...たどり着いた先が「お茶」だった。
私にとってお茶は、長らくペットボトルの緑茶のイメージで、焼き魚や唐揚げを食べた後に口さっぱりしたいから飲むものであり、味にこだわりもなければ、特段おいしいと感じたこともなかった。
このイメージが、急にがらりと変わったというわけではなく、じわじわと存在感を増してきたのだと思う。
出産前の4年間「和樂web」に携わる中で、EN TEAの取材を何度かさせていただいたのも、きっかけのひとつだった。一口飲んだ瞬間ぱっと視界が切り拓くような感覚は、体験したことのないお茶だった。また「お茶」と一口にいっても多彩な種類や製法があるということも、取材を通して学んだことだった。(って書いていたら、初回の記事のタイトルそのままだった)
ペットボトルのお茶が教えてくれたことは… EN TEA 丸若裕俊さんと考える、常識のアップデート
お茶はおいしい!と気づいても、それがなかなか日常に溶け込まない。それはなぜか考えてみると... 1.今の自分に必要性を感じない 2.どれが自分に合うのかわからない 3.楽しみ方がわからない 4.道具がない といったハードルが挙げられる。こうした悩みが、お茶に限らず、あらゆる世界の初心者の参入障壁になっているのだと思う。
1は酒に弱くなったことで代わりが必要になったことで自ずとクリアされたけど、2と3が特にハードルになっていた。それを探すのに、近所のお茶屋はなんか違う。なぜなら、バリエーションが少なく、看板の時点で素人にはわからない言葉のオンパレードだから。お茶を楽しみたい、と思っても、どうやって探したらよいのかわからない。多彩な選択肢を親しみやすく提案してくれるお茶のお店って一体どこにあるのか、わからなかった。ぴんときたのは、つい最近のことで、3月に、偶然取材で訪れたnorm tea house(御徒町)がまさにそういうお店だった。
norm tea house
何がぴんときたのかというと、ここで見せてもらったお茶の淹れる過程で登場する道具や器が、好みであったということ。「これは集めるのが楽しそうだな」というのが第一印象だった。その一部には自宅にあるようなものもあって「おぉ、これなら試せるかも」と思えた。ひとことで言えば、とっつきやすさがあった。
お茶の種類も日本茶であること以外はさまざまで、風味や製法を紹介するメニューには「ドライフィグみたいな」「干したお布団のような」とかお茶とは思えない表現が並んでいて、飲む前からワクワクした。さらにメニューが季節ごとに変わるというので、まるで日本酒やワインみたいだなぁとますます興味が湧く(酒に代わるものという視点だったから)。家に帰ってから、通販サイトをチェックしてみると、月ごとのセット購入があることを知り、即購入。子どもがいる今、お店に行けないときでも、通販で購入できるというのがありがたい。
届いたお茶の味はもちろん気に入ったのだけど、何よりも添付されていた説明書きが、また買おうと思う決め手だった。淹れ方が細かく指示されているわけでなく、こうしたらおいしいですよ、とは書かれているものの、「じゃばじゃばポットで淹れてみても...」とか、おおらかなアドバイスが書かれていて、ほっとしたのだった。お茶に限らず、何かの世界に踏み入るとき、往々にして厳しい指導を受けて、挫折する。
まずは今ある環境で、お茶を楽しんでみたい。そういう気持ちを懐深く受け止めてくれる場所(人)を探していたら、偶然にもそういうお店に巡り会えて、ほくほくと嬉しい気持ちになった。 そうして毎日お茶を飲んでみると、好きなお茶の傾向もわかってくる。煎茶も好きだけど、烏龍茶も好みだなぁとか、冷茶ももっと知りたいなとか。自然と、お茶のことをもっと知りたい!と思えるようになったので、今度は、お店のZINEも購入してみた。お茶の製法や細かな淹れ方や、生産者の話がみっちり詰まっていて、お茶と一緒に味わうように楽しめた。
お酒の代わりに、と飲み始めたのが、今では朝だったり、仕事の合間だったり、いろんなスキマ時間で楽しむものになってきた。お酒はこうはいかないから、とても新鮮な体験である。
お茶を楽しむようになるまで、自分のために時間を使うのはもったいないと感じていた。子どもを保育園に預けている7時間、息抜きする時間は無駄だ、何かこのスキマに仕事や家事をせねば...と、かつかつ動き回っていたけど、そういう尖った気持ちを、お茶が受け止めてくれたような気がする。なんなら、自分が自分らしくあるために、お茶を飲む時間が必要にさえ感じている。無駄と思われるようなことが、心の栄養になるのだなと、お茶が教えてくれたので、変な感覚かもしれないけど、お茶に感謝の気持ちが湧いている。
次のステップは、たぶん道具を集めたり、専門店に行ってみたり、本を買ったり...なんだけど、それはまた別の機会にまとめてみたいと思う。
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